おおかみこどもの雨と雪

ネタバレ注意。


サマーウォーズ』は、いくつかの物語を組み合わせて中途半端のまま終わったような感じだったけれど、この『おおかみこども』は「母子」というテーマがどっしりと中心に据えられていて、出来で言えば前作とは比べ物にならないほど良かった。


これは短所というわけではないけれど、基本的に「ドラマ」が無いのが、この作品の特徴だと思った。


雪ちゃんは花さんそっちのけで草平くんと仲良くなっていくし、雨きゅんは花さんに何の相談もしないで家を出ていってしまう。花さんの方だって、雨きゅんが不登校気味になったときも、雪ちゃんが草平くんに怪我をさせたときも、雪ちゃんと雨きゅんが取っ組み合いの喧嘩をしたときも、それに対して事情を聞いたり説教をしたりという場面は描かれなかった。母子を主役に据えた作品でありながら、その母子関係が極めて薄いのだ。


ものすごくベタにやるならば、たとえば雪ちゃんが草平くんとの関係に悩んで花さんから父親との馴れ初めを聞き出したりとか、雨きゅんが人間社会との摩擦に葛藤してそれが親への反抗という形で暴発したりとか、そういう展開があるかもしれない。雨きゅんが出ていくところは感動のクライマックスで、花さんは泣いて引き止めるかもしれないし、逆に何か良いことを言って送り出すかもしれない。しかし、この映画にそれらは無かった。子供たちが離れていくのを、花さんはただ静かに受け止めるだけだった。


不思議なことに、ドラマ性が薄いからと言って、作品に傷がついているわけではない。これは何だろうと考えて、思い当たったのは「ドキュメンタリー番組」だった。この映画はドキュメンタリーなのだ。だからドラマチックである必要がない。そう捉えれば腑に落ちる気がした。『女手ひとつでおおかみこどもを育てる美人ママ奮闘記』。あるいは『人里に生きるおおかみこどもの生態を捉えた貴重な映像』とか。


だから、俺の感想もドキュメンタリー番組を観たときの感想に近いのだった。ええ、つまり、そういうのに感動できない人間なんです、すみません。


以上。
これから感想巡りをします。