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おおかみこどもの雨と雪

ネタバレ注意。


サマーウォーズ』は、いくつかの物語を組み合わせて中途半端のまま終わったような感じだったけれど、この『おおかみこども』は「母子」というテーマがどっしりと中心に据えられていて、出来で言えば前作とは比べ物にならないほど良かった。


これは短所というわけではないけれど、基本的に「ドラマ」が無いのが、この作品の特徴だと思った。


雪ちゃんは花さんそっちのけで草平くんと仲良くなっていくし、雨きゅんは花さんに何の相談もしないで家を出ていってしまう。花さんの方だって、雨きゅんが不登校気味になったときも、雪ちゃんが草平くんに怪我をさせたときも、雪ちゃんと雨きゅんが取っ組み合いの喧嘩をしたときも、それに対して事情を聞いたり説教をしたりという場面は描かれなかった。母子を主役に据えた作品でありながら、その母子関係が極めて薄いのだ。


ものすごくベタにやるならば、たとえば雪ちゃんが草平くんとの関係に悩んで花さんから父親との馴れ初めを聞き出したりとか、雨きゅんが人間社会との摩擦に葛藤してそれが親への反抗という形で暴発したりとか、そういう展開があるかもしれない。雨きゅんが出ていくところは感動のクライマックスで、花さんは泣いて引き止めるかもしれないし、逆に何か良いことを言って送り出すかもしれない。しかし、この映画にそれらは無かった。子供たちが離れていくのを、花さんはただ静かに受け止めるだけだった。


不思議なことに、ドラマ性が薄いからと言って、作品に傷がついているわけではない。これは何だろうと考えて、思い当たったのは「ドキュメンタリー番組」だった。この映画はドキュメンタリーなのだ。だからドラマチックである必要がない。そう捉えれば腑に落ちる気がした。『女手ひとつでおおかみこどもを育てる美人ママ奮闘記』。あるいは『人里に生きるおおかみこどもの生態を捉えた貴重な映像』とか。


だから、俺の感想もドキュメンタリー番組を観たときの感想に近いのだった。ええ、つまり、そういうのに感動できない人間なんです、すみません。


以上。
これから感想巡りをします。

涼宮ハルヒの驚愕(前)(後):谷川流

Q. 面白かった?
A. うん、面白かった


Q. 4年待たせただけのことはある超傑作だよね?
A. もちろん! 最高だったよ!


『分裂』から続く『驚愕』の特徴を一つ挙げるとするならば、それはシリーズ初とも言える「外敵」の存在だろう。そもそもこれまでの『涼宮ハルヒ』シリーズには明確な「敵」というものは存在していなかった。せいぜい朝倉涼子くらいのものだったろう。そこに今回、明らかに敵意を持った未来人「藤原」が現れる。そう、「敵」は周防九曜でもなければ橘京子でもない。この藤原だ。宇宙人である周防九曜は極めて高い能力を持つが、その思考形態は人類とはかけはなれており、「敵意」などという人間らしい意識は持ちづらい。また、超能力者である橘京子の場合、その力を発揮できるのが閉鎖空間内に限定されている以上、能力としては決して恐ろしいものではない。同じく超能力者の古泉や森さんの恐ろしさは、個人の能力の高さに由来するものであって、それは今回の橘京子のていたらくを見れば分かることである。そこで未来人である。本来ならば、未来を知っている、時間を移動できるというのは、それこそラスボス級の能力のはずなのだが、SOS団の未来人である朝比奈みくるは、みくる本人の能力の低さにより、その恐ろしさをまったく発揮していない。しかし、藤原は違う。彼は意志と目的を持った人間であり、また未来人としての能力を振るうことに躊躇いがない。正しく敵役と言えるキャラクターである。
これまでのシリーズにおいて、キョンはさまざまな事件の解決に奔走してきたが、その行動はSOS団への「愛団心」に起因するものでは決してなかった。なにしろ『憂鬱』でも『消失』でも事件を引き起こしたのはSOS団の身内だったのだ。『消失』での情報統合思念体に対する暴言などは、長門へ敵意を向けられないキョンの八つ当たりでしかないだろう。しかるに今回、「外敵」である藤原の出現により、キョンはようやくSOS団の素晴らしさを高らかに謳い上げ、また存分に敵意を発露することができるようになったのである。
まさに、これこそが『驚愕』最大の見所である。
クライマックスにおけるキョンの荒みようを見よ。「ぶっちぎりでド低能」であり「パーフェクトにぶっ殺してやる」であり「スットコアンポンゲスゴミども」である。こんな素敵なキョンくん見たことない。『涼宮ハルヒ』シリーズが結局のところキョン萌えに行き着くのは自明のことであるが、それでいくとキョンの憎悪に満ち満ちたこのシーンは、シリーズ史上屈指の名場面と言わざるをえないだろう。
しかし、そこで殺伐としたバトル展開に突入しないのも、この作品らしいところなのだ。ドジっ娘・周防ちゃんも、ヘタレっ娘・京子ちゃんも、藤原とキョンが発するドス黒い敵意を薄めるミルクの役割を果たしているが、やはり最も平和的なのは佐々木の存在であるだろう。佐々木はハルヒに対抗する資格を持ちながらも、頭が良すぎるが故に己がハルヒよりも凡人に近いことを自覚し、またキョンの本心を察して、あっさりと身を引いてしまう。藤原と組んでハルヒに対抗するなど佐々木には到底できないことであり、これが全編にわたってキョンが余裕を持っていられた要因だったことは明白である。
そうして『驚愕』は、「いろいろあったけどぜんぶ元に戻りました」という、いつもどおりのヌルい結末を迎えた。もちろん喜ばしいことである。四年の間は開いたが、俺の好きな『涼宮ハルヒ』は変わることのない面白さで再び姿を現してくれた。まったく感謝感激の極みであり、信者として「超傑作」以外の評価を下すことは困難だと言うしかない。谷川流が『涼宮ハルヒ』を書いてくれればそれが俺にとっての傑作なのだ。

げーまに。2:あきさかあさひ

日常系っぽいけど日常系じゃないゲーム系青春ラブコメの第2巻。今回はラブに寄ってて超にやにや。
結論から言えば主人公のハーレム状態なのだが、ヒロイン全員が主人公への好意を多かれ少なかれ表明し、かつ主人公がそれを承知しているという、かなり特殊な状況になっているところが面白い。いわば明示的なハーレムである。その象徴となっているのが委員長だ。今巻の彼女は、他の部員の気持ちをも洗いざらいバラした上で、全く何の兆候も伏線も無かったにもかかわらず主人公に告白してみせるという、とんでもない奇襲をやってのけてしまう。フラグ無しでの告白については読者のあいだでも賛否分かれるところだろうが、しかし、このようなルール破壊的な描写こそが、ヒロイン全員から好かれるというありえない展開に不思議なリアリティを与え、この作品を単なるハーレムラブコメとは一線を画す魅力的な物語へと昇華させているのではないだろうか。なにより私はこうした不意打ちの告白というものが大好きなのである。不意打ち告白萌えである。不意打ち告白であるだけで無条件で全面降伏せざるを得ないのである。不意打ち告白万歳!
一方で、この作品はよくできたハーレム物でありながら、メインヒロインである部長とその他のヒロインとの差異化にも見事に成功している。たとえば他のヒロインたちが「好き」以上の考えを持っていない中で、部長だけが半ば無自覚に「(ビジネスパートナーとして)主人公と一緒に生きていくこと」を望んでいるのも、部長と同種同類のゲーマーが主人公だけだからだ。自分と肩を並べてゲームをしてくれるのは彼しかいない――この「唯一無二のパートナー」感こそが、二人の関係を特別なものへと変えていると言えるだろう。
この文章をここまで読んで「何がなんだかわからん」と思ったあなた。同感だ。久々の長文な上にすげー眠くて自分が何を書いているのだかわからん。要するにたぶんこうだ。「委員長萌え」「部長萌え」。これだけでいい。

すてっち!:相内円

日常系の部活物。のなかでも一話を切り詰めて短くした「四コマ小説」スタイル。新人でこれはチャレンジャーだな。あるいはそれくらい四コマ小説が広がってきたということなのか。「手芸部の美少女四人組がまったりした日常を過ごす」というあらすじを聞いて読者が期待するとおりの作品で、まあこれでいいと思う。捻ったりするとバランス崩れたりするしね。

IS<インフィニット・ストラトス>5:弓弦イズル

いつもどおりさらりと読めて手軽に萌えられる作品でした。千冬姉さんの出番が少なかったのが悲しい。もっとブラコンシスコンしてほしい。今回は生徒会長登場。一夏よりも立場が上のヒロインとしては、千冬姉さんに次いで二人目だろうか。他のヒロインがけっこう尽くすタイプだからなぁ。いちおう束さんもいるけど。

ハガネノツルギ Close Encounter with the Ragnarek:無嶋樹了

<絶対叡智(レベルイデア)>! <死に損ない(イグジスト・ノイズ)>! <終末さえ断つ者(ラグナレク)>! <代替の英雄(イレブンナイン)>! <救世の執行者(オール・エネミー)>! <神意に狂う百の獣の剣(ティアマト)>! <叛乱の神の頭蓋を穿つ杖(マルドゥク)>!
ある日突然死にかけて、美少女に助けられて、そして平和な世界と決別し、異能の世界へ足を踏み入れる。というわけで由緒正しき異能バトル、正統派の学園異能です。まあ、それ以下ではないけど、それ以上でもなかった、という感じ。いまさら異能バトルをやるなら、何かひとつ「これ」という長所が欲しかった。
実は流行りの「魔王と勇者」物でもあったりする。「異世界で魔王を倒した勇者の帰還」。現在進行形で世界を救い続けている<救世の執行者>と、異世界を忘れられずに暴走する元勇者の対決。そのあたりのテーマは面白かった。