冲方式 ストーリー創作塾:冲方丁

というわけで、買いました。税抜1300円。金が。
あ、小説じゃないけど、「小説感想」のカテゴリに入れときます。
はじめは『マルドゥック・スクランブル』について。帯に「キミにも『マルドゥック・スクランブル』が書ける!!」とかいうセンスの悪すぎるアオリがついてますが、どちらかというと、「冲方はこうやって『マルドゥック・スクランブル』を書いた!!」って感じです。『マルドゥック・スクランブル』を創作するにあたってのアイデアメモみたいなものがまるごと載っていて、そこからどのように小説を構築していったか、その手順がかなり詳細に書かれています。話が膨らんでいく過程をトレースできて、なかなかおもしろいです。
続いて、『カオスレギオン』に突入。『カオスレギオン02』の主要人物の原案と、02のプロットがまるまる、どーんと載ってます。長い。これは現物(カオスレギオン02)をあらかじめ読んでいたほうが楽しいでしょうね。どうやってこの話が書かれたのか、よくわかります。
三番目は、『蒼穹のファフナー(小説の方)』について。『ファフナー』は、『マルドゥック』や『カオスレギオン』なんかと違い、最初にあった巨大な構想からどんどん要素を切り落としていって作ったんだそうです。切り落とす前のファフナーのプロット(長い)と、切り落とした後の(つまり実際に採用された)プロット(かなり短い)が、どちらもまるごと載ってます。これも、『ファフナー』の現物をあらかじめ読んでおいたほうが、わかりやすくて楽しいでしょう。ここにはメインキャラクターの人物設定も載っているのですが、いまさらながら「こういう設定だったのかよ」と思うようなものばかりです。いくらなんでも端折りすぎ切り落としすぎ。アニメ版が悪いのか、小説版が悪いのか、はたまた俺の読解力が悪いのか、もしかして視聴者(読者)に情報を与えない作品づくりを目指していたのかもしれませんが、よくわかりません。
あ、『ファフナー』の続刊は出るそうです。よかった、よかった。ただし『マルドゥック・ヴェロシティ』を書いた後になるそうですが。いつになるんだよ。とりあえずカノンが切り落とされないことを願う。
四つ目。ここからは小説そのものについての話。とりあえず書いてみよう、のコーナー。書きたいんだけど何を書いたらいいかわからない、という人のために、主題探しのコツやらなんやらが載ってます。
五つ目。最後。小説を書くにあたっては、ここが一番参考になるんじゃないかなぁ。小説を書くときのトラブルシューティング。「説得力」を出す方法、「リアリティ」を出す方法、「意外性」を出す方法、「目新しさ」を出す方法、「インパクト」を出す方法、読者を「感情移入」させる方法、「文章」の上達法、それぞれのちょっとしたテクニックみたいなものが書いてあります。なるほどなるほど、って感じです。
また、各章の間にはちょっとしたコラム的なものが挟まってます。あるところでは、「アシスタント制度」について熱く語ってます。というより、「作家」という職業全体について語ってる印象かな。またあるところでは、これが一番興味深かったのですが、「新人を取り巻く状況について」語ってます。「編集者のストレスのはけ口にされるくらいなら、レーベルを変えるか、でなければさっさと編集者を変えてもらうべし」だそうです。この「編集者を変えてもらう」ときは、編集長に言っても駄目で、大物作家に泣きつくのがミソだそうです。せこい。あとは「業界の情報を仕入れないと、他所よりも安い原稿料でこき使われてるのに気づかないかも」とか、「レーベルによっては先輩後輩の立場がシビアなので、そういうノリが嫌いなときは他所のレーベルへ移れ」とか、書いてあります。冲方はわりと多方面で活躍してる人だから意識してないんだろうけど、他の新人さんとかはそんなに尻軽にやれるものなのかどうか疑問ですが。
あと、全体的にかなり軽いノリで書かれてあります。少なくともラノベムック本によく載ってる冲方のインタビューなんかとはかなり印象が違います。また、冲方のHPに載ってる小説書き方講座みたいなのとも雰囲気は違います。エッセイチックだし。ワナビでなくとも楽しめる一冊、ってやつですね。
以上です。おお、なんかいっぱい書いたなぁ。