スロウハイツの神様 下:辻村深月

おおう、もっと陰湿な感じの話になっていくかと思ったら全然ちがった方向に。というか、ものすごい勢いでラブ&ハッピーエンドな展開に。いい意味で予想を裏切られたよ。
環がどう思っているかというのは、察しはつくけど確信には至らなかったわけで、そうした中でガツンと言われるのはすごく良い。言ったのは桃花ちゃんだけど。不意打ちの告白というのが俺は大好きなのです。抑えた感情が発露する瞬間、というのかな。「コウちゃん、逃げよう」と叫ぶ環なんて、もう最高。
なんとなく「作為的なハッピーエンド」という印象があるんだけど、この作品に限ってはむしろその「作られた感」が好きだ。創作している人々の、わりと負の面が描かれていて、環は厳しい口調で「現実を見ろ」と言って、だからこそ最後は無理矢理でもハッピーエンドがいい。
うん、この作品はすごく良かった。