絶望系 閉じられた世界:谷川流

谷川ー! 最高だー!!
前半は軽く、後半は暗い。暗すぎてやばいくらい暗い。それで虚無。個人的に、こういうタイプの小説は、虚無的でないとラノベじゃない。キャラの主張(ひいては作者の主張)が読者の心に何かを残したのなら、それはラノベでなく純文学だと思うので。
話の筋としては、主人公の一人・建御の部屋に天使と悪魔と死神と幽霊がやってきて、建御は始終怒りっぱなしで、頭のイった美少女・カミナ(このキャラが今回は一番気に入った)とその妹がなにやら暗躍して、もう一人の主人公・杵築がそれを傍観する、というもの。ちょっとだけミステリっぽい。で、ちょっとだけメタ。杵築は「冷淡なキョン」といった風で、建御は「感情的な高崎佳由季」といった感じ。杵築と建御の二人の主人公の視点が、速いテンポで切り替わり、妙な加速感を生み出している。
全体的なノリは、「ハルヒ」よりも「学校を出よう!」に近い。世界についての言及で半分以上が埋まっていた印象がある。文体も、キョンの語りほどクドくはなく、そもそも三人称視点なので、あっさり風味。しかし、谷川らしさはきっちりと残っている。より正確に言うなら、「ハルヒ」と「学校」の二つを足して2で割った後に4引いた感じ。
「学校」におけるEMP能力者のような存在が、この作品における異常者(カミナとかミワとかある意味死神天使悪魔とか)で、高崎兄の役割を建御が務めている、と言っていいかもしれない。良識派というか人類一般代表のような建御の主張が、異常者たちにリンチのように潰されていく様は、なんつーか悪趣味すぎる。というか、建御も建御でわりと普通じゃないんだよな。
要するに、異常者が正常で正常者が異常で結局はみんな異常、という話。異常者だらけだ。
終盤に近づくほどカミナがチープになっていくが、まぁそれは仕方がないだろう。カミナかわいいよカミナ。カミナと妹の関係はけっこう独特な印象。妹は確かにカミナの玩具だが、カミナも妹の玩具で、しかもお互いがそれを了承している。立場的にはカミナの方が上なのに、妹に遊ばれることを了承するというのは、イカれてて壊れてる良い関係だ。
で、仕込まれた小ネタのほとんどがわからないんだけど、悪魔くんは何のゲームをずっとやってたのか? バーチャロン? キャラの名前の由来は?
…書評めぐりをして気になったことが一つ。みなさん、明らかに主人公を杵築として読んでらっしゃる。え、建御は脇役ですか?
西尾維新における「きみとぼくの壊れた世界」のような、計算し尽くされた完成した物語だった。あ〜幸せ。