絡新婦の理:京極夏彦

長かった。読み終わるのに、三日をまたいで五・六時間はかかったんじゃないかな。あまりに巨大な事件を複数の視点から描写して浮き彫りにしていく手際は見事。たしかに、この長さじゃないと書けないですよ。
関口君がぜんぜん出てこないのが残念でした。最後に少し顔を出しただけ。彼がいたら楽しかったろうになぁ。代わりといっちゃなんですが、今回の語り手の一人である呉美由紀さんがいいキャラしてました。友人思いの普通の少女と見せかけて実は真犯人、とかって展開を最後まで予想してたんですが、さすがに外れましたね。まあ、普通にありえないんですけど。地の文でべらべら喋ってましたし。
気に入ったシーンは「白粉アレルギー」の部分。京極堂の説明を読んで、背筋がゾクリとしました。狂気の裏に隠された真実。そういうのは大好きです。
全体的に、インパクトが薄いような気がします。エピローグの部分を冒頭に持ってきてますが、あれはやっぱり末尾に置いといたほうが良いんじゃないかなぁ。ラストを読んだ後、続けて冒頭部分を読み返したんですが、しかしそれだとやっぱり衝撃が足りない。一度読んでしまってるわけですからね。真犯人が普通すぎて拍子抜けしたってのもあります。それと、やっぱり平井骸惚の四巻ですか。「似てる」というからには似てるんだろうし、そうすると展開がだいたい読めちゃいますよね。うーん、事前知識がなければどういった衝撃を受けたのか、少々気になります。
まあ、この小説は「真相を知った時の衝撃」には主眼が置かれていなくて、ゾクゾクするような雰囲気とか、ワンシーンの美しさとか、そういったものを楽しむための小説なんでしょうね。その観点からみれば、非常に面白かったです。