ウェディング・ドレスに紅いバラ:田中芳樹

こんなにも読みづらいのは、やはり展開に起伏がないからだろう。いわゆる貧乳本というやつである。そんな言葉が本当にあるかは知らない。
毎度、主人公たちは同じような会話をかわし、毎度、同じような悪党が無様に散る。“主人公は四海竜王の生まれ変わりである”というくらいハッタリを効かせてくれないと、何を楽しめばいいのかわからない。コタツの中でボーっとテレビを眺めている貧乳美少女を愛でるのと同じようにして読むのがいいかもしれない。
ただ、20年前の作品なので、モチーフに新鮮味がないのはしょうがないことなのかも。当時は獲れたてのサンマのようにピチピチとしていたのかも。強いて言うなら、吸血鬼の設定をいじりまわしているあたり、昨今の吸血鬼物と似ているように思う。『月姫』の遠い祖先なのだろうか、そうじゃないのだろうか。