ベン・トー サバの味噌煮290円:アサウラ

銃も百合も出てこないアサウラ作品なんてアサウラ作品じゃない、そんなのサバも味噌も入ってないサバの味噌煮、チーズもカツも入ってないチーズカツカレーみたいなもんじゃないか。…そんなふうに考えていた時期が俺にもありました
いや、すごく面白かった。確かに百合がないのは至極残念なんだが、いやいちおうそれらしき二人組が出てきてはいるのだが、しかしそれがなくとも作品として高い完成度を誇っている。たとえばジョジョ4部のジャンケン小僧の話のような、チンチロリンの話のような。傍目には馬鹿馬鹿しく見えるようなことに命と誇りを懸ける人々の姿を、大げさにも思えるほどの熱いソウルと激しいテンションで見事に描き切っている、そういう作品だ。そういう作品だ、よね?
ベストキャラクターとしてはやはり槍水先輩を挙げねばなるまい。クールだが押しが強く、面倒見が良くて寂しがり屋。主人公を導く素敵な先輩として、また仄かな恋愛感情の対象として、表も裏もこんがり焼いた秋刀魚のような存在として、脂の乗った香ばしい匂いを放っている。彼女こそまさに伝説の「姐御妹」というやつではないか? また、素晴らしいDQNっぷりを発揮する主人公も輝いていた。このくらい熱い物語ならば、このくらい痛い主人公でなければ、むしろ不味い。
まあ、とにかく読むほどに腹が減って死にそうになる。真夜中のいちばん空腹になる時間に、ラーメンとチャーハンのセットやら、とろけるような豚の角煮やら…。グルメラノベとしても優秀だと思う。誰かまとめてなかったっけグルメラノベ
2巻の発売予定が既に出ているのでそれも楽しみだけど、しかしアサウラの本領は銃と百合だと思うので、そちらの方も諦めずに続けてほしいな…。