きみとぼくが壊した世界:西尾維新

くろね子さん視点の様刻くんがかっこよすぎて、様刻くん視点のくろね子さんはかわいすぎる。というか、会話がやたら楽しい。さすがにこれは楽しすぎるのではないか。世界シリーズは西尾作品の中でもいちばん苦しいシリーズだと思っていたけれど。西尾維新から毒が抜けてしまったんでなければ(そうではないと信じている)、『きみとぼくが壊した世界』は番外編に近い作品なのだろう。あとがきにも「学園外編」と書いてあるし。折り返し地点でちょっと休憩、ということなのかな。
今回は連作短編に近い。教科書の章末についているちょっとした問題集みたいな。しかし、各章のオチ(問題集に喩えておいてなんだけど「答え」とか「正解」とかではなく「オチ」って感じだよな)よりも、その構成について書くほうがネタバレ度が高いように思えるので、だから構成について書く。ネタバレネタバレ。この作品は「第1章は第2章の登場人物が書いた作中作」「第2章は第3章の登場人物が書いた作中作」「第3章は第4章の…」という構成になっている。読んでいるあいだは、「えんでぃんぐ」がどうなるかいろいろ考えていたが、特に捻ってあるわけではなかった。裏の裏の裏の裏を掻いて直球勝負、という感じ。
世界シリーズは、いちおうミステリの入門書という形式を取っているようだ。「ようだ」と書くのは、俺がミステリに関してまったくの無知で、このシリーズを入門書としてもいいか判断できないからだけど。「きみとぼくの壊れた世界」はフーダニット・ワイダニットハウダニットがテーマであり、「不気味で素朴な囲われた世界」は操り・後期クイーン問題がテーマだった、とすれば今回のテーマは何なのか? よくわからない、というのが読んだ印象だが、「作中作」とか「入れ子構造」ってミステリ的に何か重要なテーマなんだろうか?