AURA〜魔竜院光牙最後の闘い〜:田中ロミオ

田中ロミオが「流行の学園ラブコメを目指してみる」ってわざわざ宣言して書いたんだったらそりゃこんな風になるよなぁ、みたいな感じの邪気眼パロディ小説。
作中では邪気眼に染まった人を「妄想戦士」と呼称しているが、おそらく読者の大半は妄想戦士ではなかったはずで、そのぶん自虐的苦痛は少ないだろう。むしろスクールカースト描写のほうが痛い。教師の「適当にふたり組になれ」という台詞にトラウマがある人は、是非とも読んで悶えるべき。
スクールカーストという現実的な痛さと、学園ラブコメという虚構の痛さと、その二つのレイヤーの間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙。それだけに、オチのぬるま湯っぷりにびっくり。冷たい現実と暖かい妄想が混じったら思ったより温くなりました、みたいな。
まあ、過去のそれっぽい黒歴史などを思い返してのたうちまわりつつ、「まぁいいか楽しいし」って態度で読むのがいいと思う。いいんだよ、きっと。