この広い世界にふたりぼっち:葉鳥哲

MFJの新人さん。これはすごく良かった。たぶんお気に入りの一冊になるだろう。
冒頭、少女と狼が「結婚」する。人物だけ見れば『狼と香辛料』のさかさまだし、設定は『MAMA』を夫婦にしたような感じだけど、でもこの作品はそのどちらでもない。超然としたヒロインの咲希は、クラスメイトから攻撃され、家庭にも問題を抱えていて、そんな退屈な日常から離れることを望んでいる。白い狼の“月喰い”は、仲間たちから疎外され、そして同胞殺しとして追われることになる。咲希と月喰いの関係は共依存のようで、ただのバカップルのようで、とても素敵だ。やがて二人は、獣でも神でも人でもなくなっていく。
北欧神話をモチーフにしていて、それっぽい単語がたくさん出てくるんだけど、世界設定はそれほど複雑ではなく、基本的には異能バトルの流れだ。学園異能と言ってもいいかもしれない。地味だけど、雰囲気がいい。鬱くてグロい。あと微妙に百合っぽい。もはや俺の大好物だけが並んだご馳走のようだ。なんとしても続きを読みたい。