ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート:森田季節

感動した。←この作品を読めば書きたくなる。
おいおいどうしちゃったんだよMF文庫J。これといい『この広い世界にふたりぼっち』といい、今回の新人は大当たりすぎだろ。どちらの作品もレーベルカラーとは少し毛色が違っているのが気になるけど、今後は電撃文庫みたいに幅広いジャンルを扱っていきます、ということなのだろうか?
都市伝説をモチーフにしたサスペンス風青春恋愛物。扇智史清水マリコを足して2で割ったような感じだな。『永遠のフローズンチョコレート』から露悪的なところを取り除いたみたいな。死んでも死なないイケニエビトとそれを喰らうタマシイビト。タマシイビトに食べられたイケニエビトは皆の記憶から消え去ってしまう。
イケニエビトの荒川烏子が、自分の音楽をみんなの記憶に残すために、クラスメイトの神野真国と『ベネズエラ・ビター』という音楽ユニットを結成する話。イケニエビトの栄原実祈をいじめているうちに、左女牛明海の心に愛が芽生える話。林間学校に来ていた藤原保とそのクラスメイトたちが、タマシイビトに捕らわれる話。そして、明海と真国が出会う話。イケニエビトを主役としたオムニバスのようであり、明海と真国を中心とした一本の繋がった物語のようでもある。
なんと言っても素晴らしいのは明海・実祈・真国の変則的な三角関係。サディスティックな愛情。愛情のような深い友情。不意打ち気味の告白。しびれる。あと、タマシイビトというのがとても可愛らしい双子の姉妹で、彼女たちはいちおう「人の記憶を食べる怪物」ということになるんだろうけど、なんだか妙に微笑ましい気分になるんだよね。エピローグの彼女たちは本当に可愛すぎる。かわいー!