プシュケの涙:柴村仁

やぁ、これは素敵な寝取られだ。前半は自殺した少女の自殺理由を探る話、後半はその少女が生きていた頃の話。主人公は誰だ。どう考えたって由良だ。ヒロインは吉野彼方だ。榎戸川は何をした。片想いの幼馴染を奪われ、吉野彼方の“自殺”に巻き込まれ、由良につきまとわれて、自主退学した。榎戸川に救いはあるのか。…ない。
後半と前半が入れ替わってたらなぁ。先に吉野彼方の“自殺”を見せられて、榎戸川の不幸を見せつけられて、後半の由良と吉野彼方のほのぼの青春ラブストーリーを、いったいどういう気分で読めというのか。かなしすぎる。いっそ榎戸川が裏ですべてを操っていたみたいな展開を期待したけど、そういうこともなく、榎戸川は最後まで憐れなままで終わったなぁ。ミステリ的に読めば拍子抜けだろうと思う。
さすがに続編は出ないだろうな。2009年の「地味な良作」枠ということで。