いたいけな主人:中里十

「千葉国王・陸子さまの寵愛を一身に受けていた侍女・光だったが、魔性の女・緋沙子が現れるや否や、陸子さまは彼女に夢中となり、光は無残に捨てられてしまう」…みたいな話を最初は想像していた。むしろ魔性の女は光さんだった。変態だった。エロエロだった。千葉国の宮廷で繰り広げられる愛憎劇と政治劇。もちろん最初に書いたような単純な話ではなかった。ややこしい。
百合の方向性としては、まず相手がどんなに変態でも「私は受け入れてあげるわ」って言える母性、みたいなの。そしてご主人様の顔色をうかがう召使の性根、みたいなの。そう言えば『どろぼうの名人』でも、保護者・被保護者がはっきりとしていた。被保護者には保護者の考えが分からない。だから、従ったり、疑ったり、離れたり、くっついたりしてみる。そんな感じ。いや、たぶん裏にはもっと壮大なテーマがあるんだろうけど。
いちおう書いておくと、『どろぼうの名人』のサイドストーリーだと書かれているけど特に続き物というわけではない。単体で読める。