藍坂素敵な症候群:水瀬葉月

「耽溺症候群」と呼ばれる、唐突に何かが好きで好きでたまらなくなってしまう病気、が発生する街を舞台に、唯一「耽溺症候群」を治療することができる医術部長・藍坂素敵との出会いが描かれる。というふうに書くと、ちょっと捻ったラブコメのように思われるかもしれないが、そこは水瀬葉月である。「耽溺症候群」が悪化すると罹患者は理性を失い、やがてその肉体を症候群に合わせたものに変容させてしまう――たとえば、タイガーマスクに耽溺するものはタイガーマスクのような強さを身に付けるし、自転車に耽溺するものは自転車の素晴らしさを理解しない者を自転車で殴り殺してしまう――ようになるのだ。
つまり、基本的には『C3』と同じ能力バトル物なのであるが、その能力が「異能」ではなく「症候群」、つまりあくまで超常的なものではないと規定されている(いや十分に超常的ではあるのだが)ことが、グロ展開や鬱展開になりがちなところを抑えるストッパーの役目を果たしているように思われる(いや十分にグロくはあるのだが)。今回の水瀬は黒くも白くもなく、その中間である銀色でもない、藍水瀬だということだそうです(あとがきより)。