リリカル・ミステリー 白い花の舞い散る時間〜ガールズ・レビュー〜:友桐夏

素晴らしい。この絶妙な黒さ、読んだだけで気分が高揚する。
こういった「知的な子供たちの集団」には、たとえば「サマー/タイム/トラベラー」みたいなユートピア性を感じるけど、それを「少女」に限定し、さらに「ミステリ」的要素を加えたことで、とても面白い効果を出している。ぬるま湯に浸かり、花を愛でながら、人を殺す感じ。もっとも、作中で殺人事件は起こらない。でも、下手にそうするよりも、よっぽど底知れない闇が描かれていると思う。
で、結局、アイリスに関するオチはこれでいいのかと。それだけどうしても納得できないのは、俺がどこかを読み飛ばしているせい?


追記。
ようやく各所の感想を適当に見て回ったんですけど、不思議なことに、この作品に登場する彼女たちが「知的な子供たちの集団」であることに触れている感想が、俺の見た限りではひとつもなかったんですよね。一方で、ほとんどの人が、クライマックスのアレに注目している。
俺はアレには驚かなかった。だって、始めからそんな感じだったし。最初の数行に含みのある文章が置かれてて、少女たちにはそれぞれにトラウマ的な何かがあるような感じで、五人のうちの一人が来ないという謎があって、タイトルが「リリカル・ミステリー」とくりゃ、あのような展開も予測してしかるべき、というか俺は期待しまくりで読んでましたよ。もっとドス黒い展開にならないかなぁ、って。
そう、《戯言シリーズ》を読むような感覚です。登場人物たちは総じて知力が高く、そして物語は黒くて捻れている。そういった中二病心理に働きかけるタイプの小説として読んでいた。だから驚かなかった。
おそらく、この小説に驚いたほとんどの人間は「コバルト文庫から出た少女向けの小説である」ということに囚われすぎていたのでは。綺麗で優雅で清楚で耽美な小説を念頭において読んでいた。だから展開が一変したときに驚きを感じたのではないでしょうか。


うわぁ…すげえ偉そう…。
つーか半年前に出た作品をいまさら語らんでもなぁ…。