遠まわりする雛:米澤穂信

古典部シリーズ短編集。帯の「さわやかでちょっぴりホロ苦い」という惹句が某賢狼を想起させる。もちろん全く関係ない。
「やるべきことなら手短に」。ホータローと千反田さんが出会ったばかりの頃の話。どうしたら必死にならずに済むかを必死に考えているホータローは真の知的労働者じゃなかろうか。最初のほうで「あれ、ホータローのモットーは『小市民たれ』じゃなかったか」と思ったのは秘密だ。
「大罪を犯す」。チタンダエルさまワロス。ホータローのいじられキャラが板についてくる話。
「正体見たり」。せっかくの美人姉妹登場でしかも温泉旅館というロケーションにもかかわらず色恋沙汰の匂いがしないのはどうなのか…というあたりの不満は後の「手作りチョコレート事件」で解消されました。湯あたりしたホータローを心配する摩耶花はツンデレ、じゃないんだよなぁ。それならそれで里志ともっとがっつり絡んで…というあたりの不満は後の「手作りチョコレート事件」で解消されました。
「心あたりのある者は」。里志も摩耶花も出てこない話。事件を聞かされてもいないのに事件を解決してしまう安楽椅子探偵、みたいな。
「あきましておめでとう」。このあたりから俄然、恋愛要素が強まってくる。納屋に閉じ込められたんなら、二人で抱き合って一晩過ごせばいいだろ…常考。というか千反田の着衣が乱れたところで納屋の扉が開いて誤解されてあらぬ噂が立つところを見たかったよ。
「手作りチョコレート事件」。軽度の修羅場。里志くんの恋愛観はすごいなぁ。こういうやたらエゴっぽい感じを見せて、しかもさらりと受け入れちゃうのが、米澤作品の黒さというかなんというか。楽しい。
遠まわりする雛」。うにゅー。これまたホータローと千反田の関係を強化するような話。同級生としての千反田ではない、千反田家の娘としての千反田について、ホータローが積極的に関わろうとするとき、物語はクライマックスを迎えるのかもしれないけど、それはまた別のお話、か。もうプロポーズしちゃえよ。