ミサキの一発逆転!:石川ユウヤ

面白かった。なんかタイトルやあらすじからして売れなさそうなのが惜しい。どことなくスニーカー臭が漂ってる(スニーカー文庫の作品っぽいと言いたいのであって運動みたいな臭いがするというわけではない)。
『この広い世界でふたりぼっち』『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』『やってきたよ、ドルイドさん!』ときてこれも大当たりである。そういえばどれも女主人公の作品だなぁ、というのはまあどうでもよくて、MFJがこうまで面白い新人を次々に送り出してくることに、まず驚きを覚える。何か悪いものでも食べたんじゃないのか。これはあれか、普段エロいことばっかり言ってる奴が急に真面目な顔を見せてドキッ!みたいなそんな感じなのか。いや本当に面白いんだけど。
ベースは少女漫画風の学園アクションで、ムッツリ硬派男とイケメン軟派男のダブルヒーロー制だったりで、ありがちといえばありがちな話なんだけど、展開の揺らぎや独特の文体のおかげで、あまりありがちなように感じられない。たとえばヒロインが学園の王子様に殺されかけるシーン、ヒロインが無様に命乞いをするあたりが面白かった。ベタに書くなら「死んだって命乞いするもんですか」とか言って唾でも吐くところだけど。こういうちょっとした描写で、ヒロインが魅力的に感じられるんだなぁ。文体も、徹頭徹尾ヒロインを犬に喩えるような、音楽の専門用語を説明抜きで多用するような、かなり癖のある感じ。こういうあたりが次巻でどうなるかに注目したい。個性が暴走してくどくなるか、それともLOVE寄せされるか。清十郎みたいなキャラよりは麻人のほうが好きなので、彼の活躍に期待。