激辛! 夏風高校カレー部(いもうと付):神楽坂淳

なんとなく『ベン・トー』と雰囲気が似ているが、むこうはグルメ小説で、こちらは料理小説。担当編集者いわく「カレーを食べたくなるというより作りたくなる小説」ということだが、個人的には「とてつもなく美味しいカレーを食べたくなる小説」だった。主人公はレトルトカレーを褒めていたが、でもやっぱり激辛カレーうどんとか、辣油カレーとか、食べたいよな…。
この作品のもうひとつの魅力は修羅場だ。幼馴染・先輩・妹と主人公による四角関係。中でも「姐御」国崎李里が素晴らしかった。主人公のやる気を引き出すためにデートに誘い、自分を好きにさせて、自分のために頑張ってもらおうとする。それだけなら単なる女王様キャラかもしれない。しかし姐御は気は強いものの、実はわりと清純派であり、さらに主人公に対する仄かな好意も存在しているのである。幼馴染が主人公に片思いをしているのを承知で、主人公には幼馴染がお似合いだと分かっていながら、それでも敢えて戦いを挑む、修羅場を展開していく。ブラボー、ブラボーだよ姐御。さらに、兄の顔を見るのが恥ずかしくて糸電話で会話するなど、もはや変態じみたブラコンである雫ちゃんの活躍も、また修羅場に彩りを添えてくれる。
これは2008年でも屈指の修羅場ラノベだ。特に猟奇的な要素が絡まない中では最高級の逸品だと思う。後半で少しトーンダウンしなければもっと楽しめたのだが、まあ贅沢は言うまい。カレーの美味しさと修羅場の美味しさと、両方を楽しめるお得な作品。大満足。