戦場のライラプス:瑞智士記

旧筆名“木ノ歌詠”の人。“瑞智士記”名義で小説を出すのはこれが最初なのかな? 海岸に流れ着いたライラプスという名の女兵士と、彼女にそっくりな容姿をした少女・ハヤの交流を描いた作品。まあそれほど隠されてる感じではないのでネタバレすると、ハヤは移植用臓器のストックとしてのライラプスのクローンであり、その秘密を抱えつつもハヤに救われ癒されるライラプスの苦悩と葛藤が描かれるわけだ。
なんかこう全米興行成績初登場第1位!っていう感じの、ハリウッド映画っぽい感じの話で、全体的に大味なんだけど、ライラプスとハヤの何気ない会話のひとつひとつが、やけに切ない。もしこれが本当に映画だったら脚本は並だけど出演者は実力派揃い、という風になりそう。何かがバグったみたいにして出会ったハヤのために、坂道を転げ落ちるように結末に向かって進んでいくライラプスが可哀想で、だからこそこのラストが強烈すぎる。最終章の章題が意味深。
今月はガガガから出るんだよなぁ、しかも安倍吉俊絵で。これは買わざるをえない。なんだか流離ってるけど、どこかで安定して書いてくれるといいな。実力は折り紙つきなんだから。