アクセル・ワールド1 -黒雪姫の帰還-:川原礫

電撃の新人さん。大賞。複合現実感なゲームでデブかっけー!という話。読者のコンプレックスがどうだの願望充足がどうだの言われそうな感じの。多人数同時参加型バトルロイヤル物、というと『ソウルソードスーパースター』が思い浮かぶ。雰囲気はかなり似てる。決定的な違いは、SSSSが「現実世界の大人たちの戦い」であるのに対して、アクセル・ワールドは「仮想世界の子どもたちの戦い」であるという点。まあ後者のほうが売れ線ですよね…。
いじめられっ子が超人的な力を手にする、というのはよくある話だけど、それで得意になって暴走してしっぺ返しをくらって…というテンプレをなぞらないのがこの作品の特徴だろうか。ハルユキは頭が良いのだと思う。悪く言う必要もないが悪く言うと小賢しい。加速能力を手に入れても欲望に振り回されない。黒雪姫が思わせぶりな態度をとっても決して期待しない。道を外れた友人に対しては優しく諭す。卑屈と紙一重ではあるけど、まあ聖人だよな。最後の戦いとか、絶対「簡単に信用しおってバカな奴めーッ!」って後ろから襲われるだろうと思ったんだけどなぁ。
チーちゃんは悪女すぎる。「ハルに言われたからタッくんと付き合った」とか「あのときハルも告白してくれれば…」とか、いまさらなに言ってんのって、そりゃタッくんもグレるわ。ハルユキを助け、力を与え、あまつさえ好意まで抱いてくれる聖人であるところの黒雪姫と比べると、チーちゃんのひどさはいっそう引き立つ。でもそんなチーちゃんが好きです。ハルユキ&黒雪姫の聖人コンビと、タッくん&チーちゃんの俗人コンビは対になってるんだろうか。
かなり続きが気になるけど、もう一つのWeb連載小説『SAO』とやらが先に出るようだ。プッシュされてるなぁ。ストックがあるぶん早いはずだけど、それが切れたときにどういう話を書くのかにも興味がある。とりあえずはアクセル・ワールドの続きに期待。