リビングデッド・ファスナー・ロック:瑞智士記

基本は地方都市を舞台にした伝奇物なんだけど、吸血鬼やらファスナーやら性転換やら近親相姦やら百合やらグロやらエロやら混ぜまくりの捏ねまくり。凝った設定が好きなわりにそれを消化するのはあんまり上手くないと思いきや最後まで読むと意外に綺麗にまとまっているような気もする、みたいなこのもどかしい読後感が瑞智士記の真骨頂だよね。
まあしかし冬梧さんはかっこよすぎる。妹を守るために己の肉体を封じ、しかし抑え切れずに暴走してしまった哀しき男。…なんというかここまでリアルに性犯罪者っぽいキャラってのはすごいな。合掌。
全体を覆うエロティックな雰囲気と、モチーフとして使われている民話の『姥皮』が、絶妙にマッチしている。やっぱあのあたりの話はエロすぎるよな。千匹皮とかな。でも原話では「動物の皮を被った美少女」であるのに対して、この作品では「美少女の皮を被った変態」であるのが違っていて、そのあたりはトランスジェンダー的な匂いの方が強い。冬梧さんとかモロにそういう嗜好の人だし。
続きはあるのだろうか。そういえば瑞智士記はこれまで続き物を書いたことがないんだよなぁ。それっぽいのは『熾天使たちの5分後』くらいで。続いてほしいものだ。