紫色のクオリア:うえお久光

うえお久光の紡ぐ、“少し不思議な”日常系ストーリー、登場!!

はいはいダウトダウト。
たしかに前半は「少し不思議な能力を持った女の子の百合系コメディ」程度の話だけど、後半からは怒涛のSF展開に突入。これはすごい。面白い。ひとことで言えば「スケールアップしたラスト・ビジョン」。無限の「あたし」が無限のトライ&エラーを繰り返して目的を達成しようとする話。たとえば、ある「あたし」が天才ロリっ娘を誘惑してオトし、別の「あたし」が天才ロリっ子をブチ殺したとして、結果的に前者のほうが上手くいったので前者の行動を採用しましょう、みたいな感じ。さらに飛躍して、魔法を使えるどこかの「あたし」と意識を共有したので全ての「あたし」が魔法を使えるようになりました、というところまで行ってしまう。「ロボットと女の子」というテーマで短編書いて、って言われてこんなのを書くなんてまったく気張りすぎだぜ、うえお久光
この手の話の例に洩れず、叙事的な語り口で尺度の大きな物語が詰め込まれている。百合系コメディを期待して買った人は疲れてしまうだろうけど、でもSF好きの人はあらすじを読んで手に取らないだろうなぁ。もったいないもったいない。