ともだち同盟:森田季節

森田季節が初のハードカバーを出したということで購入。同じハードカバーなら天地明察買ったほうが面白いに決まっているのだが、なんだろう、一種の作家買い
男一人、女二人の「ともだち同盟」の、その名称とは裏腹な、冷え切った人間関係を描く。死んだはずのヒロインが再び現れたりするなど、ホラーチックではあるのだけど、ベースにあるのが少年少女の恋愛だということもあり、暗さや湿っぽさは感じられない。明るさや晴れやかさも感じられないが。ヒロイン二人の確執がきわめて複雑で面白いし、この悪趣味なオチも非常に良い(主に修羅場的な意味で)。この作家の良い面が最大限に発揮された作品だと思う。森田季節は、初期の平坂読的な、思いつくかぎりの変な要素を盛り込んで、結果的に散漫になってしまうということがあるんだけど、それがひとつの方向性を持ったとき、真の力に覚醒して天空人の血が脈動し新たなる姿に進化を遂げる。
とはいえ、作家としての最高到達点がこの作品かと思うと、物足りなさも感じる。もう一皮向けてほしいと思うんだけど…。