旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。:萬屋直人

主人公の少年は作中でも「少年」と呼ばれていて、もう一人の主人公である少女も「少女」と呼ばれている。この作中世界では、発病した人の「名前」や「身体」が徐々に消えていってしまうという不思議現象が発生しているので、少年も少女も自分の名前がわからなくない。そのため、お互いに「少年」「少女」と呼び合っているのだ。ううん、感想を書くのが楽でいいな。感想の中で、キャラクターのことを代名詞で表記するか、それともちゃんと固有名詞で表記するかって、けっこう悩むんだよね。
というわけで、人類は衰退しました、な世界をカブ君で旅する少年と少女の物語。タイトルからセカイ系の話かと思ったけど少し違って、どちらかと言うと『キノの旅』のような「いい話」の連作短編集といった趣き。ボーイミーツガールなロードムービー
長いこと二人きりで旅を続けながらも、いまいち恋愛関係にまで踏み込めない少年と少女の、思春期すぎる遣り取りが見もの。もう完全にカップルなんだけど、でも恋人扱いされるのを恥ずかしがるという、その微妙な心理が、いい感じに青春ですね。